【感想文】光より前に~夜明けの走者たち~ 11/23夜

題材に惹かれて。マラソン観るのすきです。駅伝の方が好きだけど。でもテレビ観戦オンリーです。

hikari.westage.jp

 

初っ端からネタバレ?しますが、円谷選手が自殺されたのは知っていました。

けど、怪我とプレッシャーがあって、程度の認識でしたので、この劇で詳細を知って本当に可哀想だと思いました。可哀想という薄っぺらい言葉では伝わらない気がします。時代もあると思いますが、本当に国に殺されたような形で…

そんな話なので大変重い…!けれどとてもよい演劇でした。

 

まず演者が5人というミニマム編成で、紀伊國屋ホールで舞台装置としてパネル5枚(かな?)使う舞台としてはよい人数なのかなと思います。

(アンサンブルさんがいないということは、パネルはスタッフさんが動かしているのだろうか…?)

皆さん上手い役者さんですしね!ミニマム編成で下手なひと混じると逃げ場無くて目も当てられないことになるので。

 

青学の原監督が監修されたのは存じてたのですが、ええと、どのあたりを…?

『舞台「野球」飛行機雲のホームラン』では桑田さんはピッチングを伝授していらしたので、やっぱりフォームとかなんでしょうか。ちなみにフォームについてはよくわかりませんでした。両選手の走っている映像をじっくり見たこともないので、似てるかも分かりません。

そもそも舞台上を走るわけにいかないので、足運びはどうしても不自然に見えてしまいますね。上体は綺麗でした。

 

この作品で、自衛隊体育学校東京オリンピックの選手育成のために作られたと知りました。勉強になります。

 

最近パネルを使って場面転換するの良く見ます。スムーズだし暗転挟まないので集中切れなくていいです。

この舞台のパネルはプロジェクションマッピングの投影板としても使われいて、演者5人でも空間が寂しくなることはありませんでした。

逆に真っ白にして心象風景に使ってプレッシャーに押しつぶされそうな感じを出したりもしていて、すごく良かったと思います。

パネルの角度もうまく使っていて、道の表現も一辺倒ではなかったし、パネル大活躍でした。

 

円谷・君原両選手の対比と絆を描いている作品で、対となる場面はいろいろあるのだけど、印象に残ったのは「マラソンは一人で走るもの」というセリフ。冒頭、東京オリンピックの時は君原が言っていたその言葉を、畠野コーチと決別する場面で円谷が言う。でも本当は一人で走れないことは円谷自身も分かっていて。

自死後の二人の対峙の場面はぐっときました。なぜ走るのか。答えは明示されないけれど。とてもいいシーンでした。

マチネのトークゲストに君原選手ご本人いらしていたのですね。感想お聞きしたかったな。

 

 

以下、キャスト方の感想。5人だから全員書けるぞ!(笑)

HPのキャスト表順です。

 

円谷幸吉役 宮﨑秋人さん

ピカレスクセブン以来。久しぶりのような気がしていたけど、そんなでもなかった。上手い役者さんだと思っているので、観られるの嬉しいです。

雨の中の慟哭のシーン、宝田記者とのレストランのシーン、術後~自死~君原との対話のシーンと精神的にキツそうな場面がたくさん!

きっと精神的にすごく疲れると思います。

勿論走っている場面もあるし体力的にも大変だろうけど、なんというか、ペダステに比べたらあれくらいなら大丈夫でしょ?と思ってしまう…前傾にならないし…

秋人くんが走っていると、前傾姿勢でもないのにどうしてもペダステを思い出してしまう(よくない)途中で向き変えたりするし…ぺ、ペダステ…!(違う)

 

無邪気で素直でかわいい幸吉くんが、どんどん追い詰められていくのを見るのは辛い…自死に至るまでの感情の揺れなど、説得力があったと思います。

幸吉くん末っ子感強かったー。座組で最年少だし、周囲のキャストさんに助けられているんだろうな、とは思うけれど、やっぱりいい役者さんだな。

ところで私は秋人くんの脚がすごく好きです(フェチ発動)膝が締まってて脛が長い。

 

 

君原健二役 木村了さん

髑髏城下弦の月以来。相変わらず芝居がしっかりしていて安定感抜群です。

かなり早口で長文のセリフがあったりするのだけれど、もうとにかく滑舌いいし聞き取りやすい声だし。

プライド高くて理屈っぽくて天邪鬼。実際の君原選手がこうだという訳ではなくて、円谷選手との対比で役作りされたのかなあと思いました。どうなんでしょうね?

でもとても魅力的な人物でした。大体結婚してから成績が上がるとか、女性受けしますよね(これは君原選手の実際の成績がそうなのですが)

好きな場面は宝田記者が訪ねてくる前、風鈴を鳴らしているところ(姿が良い)と、高橋コーチの説得を受け入れて復帰するところ。ツンデレ

 

 

宝田修治役 中村まことさん

こちらも髑髏城下弦の月以来。宝田は陸上専門誌の記者でこの舞台のストーリーテラー

冒頭でマラソンの起源を説明するところがあるのですが、途中で芝居が入るので続きが始まった時、一瞬「なんの話?」と思ってしまいました。ちょっと集中力を欠いていたかな(私が)。

陸上競技に詳しく、コーチより遠いけれど個人的にやりとりできる程度には近い、絶妙な距離で円谷・君原に助言を与える存在。

緩急の付け方も巧いし、宝田記者本人がどういう人間なのかよくわかるし、ベテランの演技だと思いました。その役の人生が見えるんですよね、こういう演技好きです。

宝田記者は多分団地住まいで奥さんはパートに出てて、子供は高校生の男の子2人だと思います。きっと晩酌は缶ビール1本と奥さんに決められている。実は長距離は専門じゃなくて入社してから勉強したとかだと尚良いです。

 

 

高橋進役 高橋光臣さん

君原選手のコーチ。感想は、とにかくこの役はずるい。ずる過ぎる。かわいい。

シリアスな芝居の中でコミカル部分を一手に引き受けてる。キャスト5人しかいないのでコミカル担当は1人で十分ですね、おいしいです。

コミカルをやるのも本人の資質と技量が要るので、誰にでもできるわけではないのですが。それにしてもおいしい…

高橋コーチ、ヘタレな人なんですよ。君原と口論しても負けちゃうし、我侭も「ああいう選手だから」と許しちゃう。でも実は粘り腰だし政治力もあって、君原の実力を買っていて、メキシコオリンピックに導いていく。ずるいわー。好きになるしかないでしょこんなの。

 

 

畠野洋夫役 和田正人さん

東京オリンピック時点での円谷選手のコーチ。熱血で円谷選手の特性をよくわかっていて、上層部から円谷選手を庇おうとするけれど、それが原因で北海道に左遷されてしまう。

円谷選手と同じく、一生懸命もがいて、生きているのに、大きな力に振り回されてままならない人です。強く生きて行って欲しい。(実在の人物でもう亡くなられてるけど)

 

和田さんは箱根駅伝ランナー出身の俳優さんとして有名ですし、だからこその配役だと思います。きっと助言もたくさんしているんだろうと思います。

円谷と畠野はスキンシップが多くて、親しい家族のようです。稽古場でも後輩を可愛がりまくってくれたに違いないと思っています。ほっぺたうにうにするの、やられてる幸吉もかわいいけど、やってる畠野も結構かわいいと思います(笑)

 

 

テーマは重いし、シリアスな芝居だけど、話の運びは緩急がついていて見やすかったです。途中で中だるみすることもなく。テーマもしっかりしていて、それでいて観客それぞれに考えさせられる部分もあり。

よい演劇でした。