感想文 舞台「野球」飛行機雲のホームラン 7/29

おもしろかったー!

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 アフタートークある回でしたが、所用がありまして終演後すぐ退席させて頂きました。
参加できず申し訳なかったです…

 

公式HPイントロダクションより

1944年―
戦況が深刻化し、敵国の競技である野球は弾圧され甲子園は中止されていた。
甲子園への夢を捨てきれず予科練に入隊した少年たちは、
「最後の一日」に、出身校同士で、紅白戦を行う―


甲子園優勝候補と呼ばれた強豪・伏ヶ丘商業学校。
実力は未知だが有力と思われる会沢商業学校。

野球への憧れ、強い仲間への憧れ―
「憧れ」を通して、人が生きていく力、「行きたい」という希望を描く。

 

 

舞台進行のベースは野球の試合(1回から9回まで、時系列)
その間に、その試合が開催されるまでの過去のエピソードが挿入される。
時間と場面が頻繁に入れ替わるので、分かりにくい、と感じる人もいるかも?
ただ、私は普通にストーリーを追えたので、そこまで難しくはないかと。

 

球場より舞台は狭いから(サンシャインの舞台幅はピッチャーマウンドからバッターボックスまでの距離よりも短い)、野球の試合をどう表現するのか、というのがひとつの見どころになっていると思います。

 

多くの場面は、投手・捕手・打者の場面
野球中継でも打たなければ大体この3者しか画面に映らないですから、そうなりますよね。
ただ、野球中継では投手の背中から打者と捕手を捉えているのに対し、舞台なのでそこの表現が豊かになっていて、見ていて楽しかったです。
テレビ中継と同じような構図のときもありましたし、投手と捕手・打者が向き合う形ではあるけれど、角度がついていたり。
打者と捕手が舞台手前(客席に近い方)に立ち、投手が奥に立っていて、三者とも客席側を向いていたり。

 

すごく好きだなと思ったのは、ストライクゾーンが照明で表現されているところ。
ボールとストライクが分かりやすい。
…もしかしてあれはホームベースなのかな、得点するときにはホームベースになっているけれども…打者の立ち位置的にストライクゾーンだと思ってました。

 

打者が打つと、ファウルか本塁打以外は野手の場面になるので、投手・捕手・打者がさっと捌けてボールが飛んだ場所にいる野手が出てきます。内野のことも外野のこともある。
ダブルプレーで下手でショート→上手でセカンド→奥側でファーストと次々出て来てはボールを取って投げて袖に捌ける、というのはスピード感もあって好きです。
なお、舞台は八百屋になっているので、役者さんはかなり体力使うと思います。最近八百屋多いですね。見やすいので好きです。

 

2回ほど、客席通路を使って塁間を表現していました、下手が一塁、中央やや上手が二塁、上手やや客席寄りが三塁。
最初何やってるのか分からなくて、打者が通路走ってきてやっと分かった。ベンチ応援か何かかと思っていました。表現って難しい。

 

基本的には実際のボールは使ってなくてモーションと効果音での表現なんだけど、ボールを受けたキャッチャーミットから粉塵があがるところがとてもいいです。
あと、たまに実際のボール使うところでは、役者が捕り損ねる場合もあるので、ボール使う場合は袖から舞台へ投げられて、袖に投げる。
私が観たとき、ボール捕らなきゃならない場面で捕れなくて、そのままボールが袖に消えていったことがありました。

 

敵国語につき、全部日本語に置き換えてるけど、審判のフォームは同じなので野球を分かっていれば何となくわかる。
選手が「それぞれ9人」なのに8人しかいないの、ちょっと気になるけど、大人の事情につき、ですね。

 


野球の演出のことばっかり書いてしまった…(笑)

 


最後の穂積の特攻シーンは入れない方が良かったんじゃないかなあ。すごく蛇足感がある。死ぬ場面が明確に描かれない方が、残された唐澤の、そして観客の悲哀も増すのではないか、とか。ちょっと思いました。

 

言葉遣いがちょくちょく現代男子高校生っぽいのは、わざとなのか当時もそうだったのか…「彼女ほしい」とか。
「トンネル~~~!」は舞台上でのネタ(笑わせるところ)なので気にならないです。

 


キャラクターはそれぞれ魅力的だけど、会沢の方がメインなだけあって時間割かれてるかな?
私がいいなと思ったのは早崎。全く格好よくないけど、だからこそいい。最初は現実に打ちのめされるけど(早々都合よく神様助けたりしない)、菊池先生のエピソードと絡められた日には…!
号泣です。
この、菊池先生が私のお気に入り。かっわいいの!会沢商業の監督だけど、野球はさっぱり分からない門外漢。
渾名は「父、帰る」または「父」←縮めちゃうの男子っぽさある。
前半あんなに可愛いマスコットなのに、後半のキツさ…つらい。


「誰も悪くない」みたいな描き方で、たぶん戦争という非常時における非人格性というか、時代が悪い、という感じでしたね。
ちょっとご都合主義的かなあとは思いました。
特に唐澤が兵役免除されるところ。

キャラクターやエピソードも若干「ありがち」な感じはありましたが、丁寧に描かれていたし、嫌だなとか、そういうことはありませんでした。

 


最後に、ちょっと野暮かなあと思いつつ、ただどうしても気になってしまうので…史実との齟齬について。
まず、どうやら劇中では陸軍ぽい?感じなのですが、『予科練』は正式名称『海軍飛行予科練習部』で海軍なんですよね。
「海軍に志願した、飛ばなくて済むから」というセリフがあったので、やっぱり陸軍。(大日本帝国に空軍はない)
それから、どうやら“特攻前の”最後の一日っぽいのだけど、予科練は志願だったようです。赤紙貰ったら予科練生ではない。
特攻作戦が始まったのは1944年10月だし、予科練生が駆り出された練習機での特攻は1945年に入ってから。回天での特攻についても言及されていたのだけれど、こちらも1945年5月からの投入。
甲子園が空襲被害にあったのは1945年8月。
なので…1944年ではなく、1945年なのでは…?細かいこと言うようだけども、そういうところのリアリティは欲しいと思ってしまう。
イントロダクションUPした時はまだ台本上がってなかったのかな、西田さん遅筆ですもんね…

 

涙出るし鼻水でるし、嗚咽が止められないところもあって(声を出さないように頑張ったら身体が震えてしまった)本当に周りのお客様にはご迷惑をおかけしました。

目当ての安西さんと内藤さんは期待を裏切らない良いお芝居をなさっていました!日程厳しかったけど、行って良かった。